新潟県の南西部に位置する上越市。県内では3番目に人口が多い、およそ19万人が暮らすまちです。山間部はもちろん平地でも大雪が降り、日本を代表する豪雪地として小学校の教科書に掲載されたこともあるほど、雪深い地域として知られています。
ここ数年は、暖冬で雪国らしかぬ少雪が続いていましたが、今冬は一転。1月は上越市で最大積雪量2メートル49センチを記録する、近年では類を見ない大雪となりました。
2021年1月8日 上越市市内
大雪となった1月の数日間は、止めどなく雪が降り続きました。市内の幹線道路では除雪が追い付かず、雪で車を出すことができません。電車も運休となり、会社に出勤できない人も。小学校も1週間ほど休校になりました。
そんな大雪の時に困るのが雪の処理です。
住宅が密集する地域では、除雪をしても、雪を捨てる場所がないのです……。
上越市の高田地区には、間口が狭く「町家」と呼ばれる長屋が連なった地域が多くあります。このような住宅密集地では、大量に積った屋根の雪の処理が課題になります。家屋の倒壊を防ぐために、一刻も早く屋根の雪を下ろしたいところですが、屋根の雪下ろせば、道路を塞いでしまいます。
そんな窮地から抜け出すための雪国ならではの除雪方法が“一斉雪下ろし”です。大雪の後、地域の道路を交通規制して、住民が協力しあって一斉に屋根の雪を下ろし、排雪します。
今年は9年ぶりに高田地区を中心に一斉雪下ろしが実施されました。対象は35町内、およそ3000世帯。2日間にわたって実施されました。
「雪トヨ」 屋根の雪を滑り落とす道具
高田の町家の多くには雪下ろしをするために、屋根に上がれるようにハシゴが設置されています。また、屋根の雪を下ろすのに便利な「雪トヨ」と呼ばれる道具を備えている家も多く、これを使って雪を滑り落とします。
屋根から次々に下ろされた雪は、またたく間に広い道路を埋めていきます。
この通路は、高田ならではの「雁木(がんぎ)通り」です。高田地区の車道と町家の間には、雁木(がんぎ)と呼ばれるひさしが設けられ、それが町並みに沿って連なり、雁木通りを形成しています。
屋根から下ろした雪で道路が埋まっても、住民は雁木の下を通って往来できます。雁木通りは各家の私有地ですが、連なる家々が快く提供し、誰でも自由に通ることができるんです。雪国ならでは、知恵が詰まった生活道路です。
さて、屋根から一斉に下ろした雪はどうなったのでしょうか?
一斉雪下ろしをした翌日には、除雪車とダンプで雪を運び出す排雪作業が始まります。道路を覆いつくした雪山を次々に崩し、雪に閉ざされた町が解放されていきます。
ロータリー除雪車とダンプが並走しながら、除雪した雪をダンプに積み込んでいきます。オペレーターと運転手、交通誘導員の連携プレーも雪国ならではの光景です。
撮影:2021年1月23日・25日「一致団結!一斉雪下ろしと排雪」
「ロータリー除雪車とダンプカーの絶妙なチームワーク」